ポストコロナにおけるクロスボーダーM&Aのポイント

I-GLOCALグループ、スターシアグループ 、CaN International、CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd.

蕪木 優典、黄 泰成、大久保 昭平、工藤 拓人

I-GLOCALグループ、スターシアグループ 、CaN International、CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd.

キャリアサマリー
<座談会メンバー>
蕪木 優典(かぶらぎ・ゆうすけ)
I-GLOCALグループ 代表
1972年生まれ。94年慶応義塾大学経済学部卒業。96年朝日監査法人(現・あずさ監査法人)に入所。2000年アンダーセンベトナム(現・KPMGベトナム)に出向し、以来、ベトナムでのビジネスに携わる。同年、日本人で初めてベトナム公認会計士試験に合格し、ベトナム公認会計士登録。03年ベトナム初の日系資本会計事務所(現・I-GLOCALグループ)創業。10年カンボジア初の日系資本会計事務所創業。11年カンボジア会計士協会に会計士登録。日本、ベトナム、カンボジアを往き来しながら「ワクワク経営」を実践中。

黄 泰成(こう・たいせい)
スターシアグループ 代表
1971年生まれ。95年慶應義塾大学経済学部卒業。同年青山監査法人入所。97年朝日監査法人(現・あずさ監査法人)入所。2000年アーサーアンダーセンアトランタ事務所駐在。02年KPMGソウル事務所駐在。07年にスターシアを創業して以降、日本と韓国を行き来しながら、主に日系企業の韓国進出や韓国ビジネスを総合的にサポートしつづけている。20年公認不正検査士登録。

大久保 昭平(おおくぼ・しょうへい)
CaN International 代表
1980年高知市生まれ。立命館大学卒業、早稲田大学大学院修士課程修了(ファイナンス)。新日本監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)、SCS Globalでのシンガポール勤務を経て、現職。CaN Internationalでは、グループ経営管理、クライアント開発、各種コンサルティング業務に従事する。専門はコーポレート・ファイナンス、経営戦略、国際税務、会計監査。日本公認会計士協会東京会経営委員会委員長を歴任。20年より、明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授も兼任する。

〈進行〉
工藤拓人(くどう・たくと)
CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd. 代表
弁護士法人キャストグローバルパートナー
1985年生まれ。日本国弁護士、ベトナム外国弁護士。2008年東北大学法学部卒業。10年神戸大学法科大学院卒業。11年に弁護士登録し、弁護士法人キャストに参画。以来、日系企業のベトナム・中国における進出・運営に関する法務のサポートを行う。14年よりベトナムに居住し、社内のベトナム人弁護士とともに日系企業200社ほどにM&A、企業法務、労務その他ベトナムにおける法務支援を幅広く行っている。

目 次

4M&A市場のグローバル化にともない財務リテラシーがますます重要に

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蕪木:ただ、そういった動きが世界的に顕著になればなるほど、日本企業は攻めだけでなく、守りにも注力しなければなりませんね。そもそも、日本には創業何百年という老舗企業が世界一多く存在しますし、そういった企業は他社がマネできないような技術やサービスを保有しています。そのようにキラリと光る技術やサービスを持つ企業こそ、財務リテラシーに照らしながら自社の企業価値をしっかりと見極める必要があると思います。

黄:とはいえ、老舗企業のなかには素晴らしい技術やサービスを持っているのに経営状態が芳しくなく、自力での再建が難しいところもあると思います。コロナ禍にあっては、これからますますそういったケースが増えてくるはずです。そういったときに、その企業の経営資源や雇用を引きつづき守る選択肢のひとつとして、クロスボーダーM&Aをあげていくことも必要になってくるかもしれません。

工藤:ところで、クロスボーダーM&Aを成功に導くにあたって、M&Aコンサルタントとしてどのようなことが大切だと思われますか。

大久保:クロスボーダーM&Aは、買い手にとっても現地の業界動向や慣習および対象会社のビジネスモデルに対する理解が乏しいなかで実施されることが多いため、国内案件と比較するとその難易度は高い傾向にあります。そのため、当該案件がM&Aの目的、ひいては企業戦略に適合するかといった点についてクライアントである買い手と目線を合わせながら、専門家としてディールブレークにつながるようなリスク項目を検出し、対応策を協議すること、クライアントと密なコミュニケーションをとることが重要です。弊社ではこのようなスタイルを徹底しており、現在はM&Aに関するオファーの半分くらいがリピーターからの案件となっています。

黄:現地の法規制や人事制度などがどうなっているのかといったリスクを徹底的に分析することが肝心です。一部にデューデリジェンスを義務的な業務と捉えている経営者やコンサルタントがいますが、それでは絶対にいけません。まさにそのあたりがクロスボーダーM&Aが成功するか否かの決め手になるはずです。

大久保:そのためには、現地の制度や事情に精通したコンサルタントのM&Aチームへの参加は欠かせないですよね。

蕪木:そうですね。ここに集まった面々はまさにそういった人材をグループ内に豊富に抱えているように思います。当グループにもTran Nguyen Trungさんという素晴らしいパートナーがいます。彼は日本のホーチミン市工科大学を経て、大阪大学大学院情報科学研究科に留学、さらに日本の大手SIベンダーに就職して金融系基幹システムの開発・保守に従事した経験を持っており、日本人以上に日本の商習慣や感覚に精通しています。当然、ベトナムの事情にも詳しいので、日本とベトナムの架け橋として大いに活躍してくれています。

大久保:われわれはM&Aの検討段階から案件に関与することが多いです。そのため、PMI(M&A後の統合プロセス)を見据えたデューデリジェンスを行うことによって、クライアントと二人三脚でできるかぎりはやい段階からPMIに取り組めるような体制の構築を心がけています。

工藤:最後に今後の展望について伺いたいと思います。

蕪木:日本企業の強みといえば、従業員の会社に対する愛情やロイヤリティとされていましたが、終身雇用制度などが崩壊し、グローバルな競争にさらされるようになった今日、M&Aはさらに必要不可欠なツールになっていくと思います。

大久保:はい。コロナ禍を機に企業の生き残りをかけた競争はさらに激化していくと思いますので、その傾向はより顕著なものになってくるのではないでしょうか。

黄:そうですね。それと同時にM&Aコンサルタントにはこれまで以上に財務リテラシーが求められるようになってくるし、クライアントに対して愛情と好奇心を持って接することがますます重要になるはずです。

工藤:クロスボーダーM&Aについて示唆に富んだお話を伺えました。本日はありがとうございました。

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