ウィズ・ポストコロナを見通して
IPOにチャレンジする地場企業の資金調達力②

I-GLOCALグループ、株式会社うえる、江黒公認会計士事務所

蕪木優典、上野 亨、江黒崇史

デフレ不況とコロナ禍にある日本にあって、今もなお約2000社がIPO(新規上場)を目指しているという。はたして、その目的はどこにあるのか。
たんなる資金調達のためなのだろうか。さっそく、数々のIPO支援を手掛けてきた3人に、なぜ多くの企業がハードルの高いIPOに挑むのか、そのワケとトレンドを聞いてみた。


I-GLOCALグループ、株式会社うえる、江黒公認会計士事務所

キャリアサマリー
上野 亨 うえの・とおる
株式会社うえる 代表取締役
1973年生まれ。94年立教大学社会学部中退。97年ソフトバンク㈱入社。99年イー・トレード証券㈱( 現・㈱SBI証券)転籍。2014年同社コーポレート部部長。15年㈱うえるを設立し、代表取締役に就任。16年より㈱Payment Technology代表取締役を兼任。

江黒崇史 えぐろ・たかふみ
江黒公認会計士事務所 代表
1974年生まれ。99年早稲田大学商学部卒業。2001年公認会計士二次試験合格、監査法人トーマツ入所。05年㈱アーケイディア・グループ入社。08年清和監査法人パートナー就任。14年江黒公認会計士事務所を設立。15年より㈱E-FAS代表取締役を兼任。

蕪木優典 かぶらぎ・ゆうすけ
I-GLOCALグループ 代表
1972年生まれ。94年慶応義塾大学経済学部卒業。96年朝日監査法人(現・あずさ監査法人)入所。2000年アンダーセンベトナム(現・KPMGベトナム)出向、同年日本人ではじめてベトナム公認会計士試験に合格。03年ベトナム初の日系資本会計事務所(現・I-GLOCALグループ)創業。10年カンボジア初の日系資本会計事務所創業。

目 次

1証券市場の動向を把握し、自社に適したIPOを

蕪木:IPO後の初値や公開価格の設定についてはどうお考えですか。

江黒:初値が高くついた後に暴落すると、経営者も従業員も辛い思いをしてしまうので、やはり公開価格も時価総額に即したものであることが望ましいと思います。

上野:もちろん、株価が適正価格であることは非常に重要なのですが、日本においては投資家保護の側面が強すぎる向きがあるように感じています。そもそも、投資家は自己判断で投資をするわけですから、株価の変動は許容すべきですし、経営者としては初値でシッカリと資金調達ができなければ意味がありません。にもかかわらず、日本ではIPOディスカウント(時価総額に対して、10~30㌫程度のディスカウントを行ったうえで公開価格をきめること)が行われるなど、過度な投資家保護がなされているように思うのです。

蕪木:たしかに公開価格を割安に設定すれば、投資家はリスクを減らしながら値上がり益を期待できますが、経営者にとっては調達できる資金が減少してしまう恐れがあるわけですね。
上野:そういった仕組みになっているため、初値は基本的に公開価格を上回るようになります。しかし、公開価格そのものがディスカウントされているので、経営者は多少の上昇ではメリットを十分に享受できないのです。当面、この仕組みが変わることはないでしょうが、経営者のためにもいつかは改正されてほしいと思います。

蕪木:ところで、昨年にはソフトバンクグループが特別買収目的会社「SPAC」(スパック)を利用してアメリカの株式市場に上場しましたが、そのあたりについてはどう思われますか。

江黒:SPACはペーパーカンパニーであり、その目的は未上場企業を一定期間内(原則2年以内)に買収し、従来の上場プロセスをスルーすることにあります。マネーゲームを助長するのではないかという見方もありますが、経営的な観点からするとニーズも大きいように思います。

上野:たしかに、IPOをスピーディに実現するうえでは有効な仕組みだと思います。すでに金融庁や東京証券取引所などでも議論がなされているようですが、日本ならではの規制を盛り込みすぎて使いづらい制度にならないことを願っています。

蕪木:最後に今後のIPO支援にかける意気込みについてお聞かせください。

江黒:監査法人に入所したときにはIPO支援を手掛けるようになるとは思ってもみませんでしたが、今では多くの経営者の熱い思いに応えられることに大いにやりがいを感じています。これからも生涯現役という気持ちで、IPO支援に全力を注いでいきたいと思います。あと、いずれは自分でも何かしらの形でIPOを成し遂げてみたいですね。

上野:私は証券会社で主幹事引受事業を立ち上げた経験やIPOの引受コンサルティングを手掛けてきた経験を生かしてIPO支援に取り組みつづけてきました。経営者という立場で複数の事業をIPOに導くのは困難ですが、コンサルタントという立場であれば多くの企業をIPOに導くことができますし、そのたびに最高の達成感を得られるので、私もやはり生涯現役でありたいと思います。

蕪木:私も公認会計士、そしてIPOコンサルタントとして、これからも多くの企業を支えていきたいと思います。本日はありがとうございました。

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