中川 幹久さんの写真

中川 幹久 なかがわ もとひさ

日本・アメリカでの経験を活かし、日本企業のアジア進出をベトナムからサポート

所属企業 長島・大野・常松法律事務所(ホーチミンオフィス)
役職 パートナー、オフィス代表
最終学歴 Stanford Law School(LL.M)
出身地 東京都
現住所 ベトナム・ホーチミン市

目 次

4達成感を感じた体験

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 2011年、ホーチミンに赴任して来たとき、長島・大野・常松法律事務所の人間は私一人でした。その後、自前のオフィスを設立し、私と思いを共有してくれる日本法弁護士、ベトナム法弁護士、そしてベトナム人スタッフが集まり始めました。毎年年に一回、ホーチミン・ハノイ両オフィスのメンバーなどが参加し、事務所旅行をしていますが、気がつけば、40名前後の大家族に囲まれていました。オフィスを立ち上げた当初は、ローカルの法律事務所と協同して対応していたような案件も、現在は基本的に全て内製化し、自前で対応できるまでの組織に成長しました。こうした素晴らしいメンバーとともに、依頼者の難易度の高い案件を成就させるたびに、言葉では言い表せない達成感を覚えます。

5仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

 日本そしてアメリカでM&A案件をはじめとした企業法務を経験し、私自身一定の自信をもってベトナムに赴任してきましたが、ベトナムで駐在を開始した直後は本当に戸惑いの連続でした。日本やアメリカでは、膨大な数のデータベース化された判例とその解説が存在し、これをベースに各種学説なども構築されていますし、各種ガイドラインなども整備されていますので、アドバイスを提供する上では、こうした情報を広範囲に集め、これらを精査・分析し、一定の予測可能性をもって想定できる帰結を依頼者にお示しした上でアドバイスすることができます。しかしながら、ベトナムでは判例制度が開始されたのがわずか数年前、2021年2月現在ではまだ50に満たない判例しか存在しません。判例の判決文の内容にも課題が多く、どの部分に規範性があり解釈指針たりうるのか明確ではなかったりします。当然学説・法理論も、日本やアメリカのように成熟したレベルでは構築されていませんし、ガイドラインなども未整備です。今まで当然の存在と思っていた情報源が存在しないわけです。上述した現地での弁護士や当局を含めたネットワーキング、信頼関係の構築の重要性を認識した瞬間でした。現在は、赴任から10年の間に構築した様々な現地のチャネル・ネットワークがあり、書物やデータベースに記載されていない情報やサポートを得ることができます。改めて、現地の様々な人々との信頼関係を構築することの重要性を感じています。

6M&Aアドバイザリーに求められる資質やスキルについて

 アメリカに留学する前に日本で経験したM&A案件は、上述のとおり大規模な案件が多く、こうした案件では、限られた時間の中で極めて膨大な量の資料・情報を裁くことが求められます。そこでは、本当に重要な問題点・ポイントを短時間のうちに見分け、しかし見逃さない能力・センスが求められ、契約交渉では、両当事者の主張の核心部分を的確に捉え両者が納得できるバランスのとれた落としどころを見つけ出す能力などが重要になると感じます。同時に、数週間徹夜に近い作業を耐え抜く体力も不可欠であり、またチームプレーですので、そうした状況でもコミュニケーション能力を発揮して明るく周りを盛り上げるキャラクターがあればなお良いと思います。こうした資質・スキルはベトナムなど海外でM&Aアドバイザーを務める場合においても共通して求められるように思います。特にベトナムなどの発展途上国では、買収前に対象会社のデューディリジェンスを行えば、日本では考えにくいような問題がゴロゴロ発見されます。こうした問題のうち、どのようなものが決定的なリスクにつながるため目をつぶってはならず、逆にどのようなものは目くじらを立てる必要がないのか、という選別を正確にすることができ、また、同時に、発見された問題に応じて、いかに現実的な解決策を提示できるのかが問われており、こうした点に対応できる能力・資質が、現地におけるM&Aアドバイザーには求められていると思います。

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