藤江 大輔 ふじえ だいすけ

　現在、私はタイビジネスを支援する弁護士として、日本人弁護士、タイ人弁護士達と共にバンコクで仕事をしています。私がカバーする領域は原則としてタイ国内ですが、当事務所は東京オフィスとマニラオフィスを有し、マレーシアの事務所とも提携しており、GVAグループとして、タイ以外の諸外国でのビジネス展開も積極的に支援しています。

　GVA法律事務所は、スタートアップ企業の支援に特化した事務所ですが、私が参画した当時は、まだスタートアップ企業に対する投資は今ほど盛んではありませんでした。デバイスとしてはiPhone 5が最新機種で、ソーシャルゲーム時代などとも言われ、大ヒットしたパズル＆ドラゴンズが公開されたのも2012年です。今では上場企業として名を連ねる多くの会社が創業間もないフェーズだったりして、そういう方々が切磋琢磨して事業の成長に挑戦していた時期に、同じく創業間もないGVA法律事務所の一員になりました。

　複数の企業で執行役員、社外監査役を経験するなど、積極的にスタートアップ支援に関わりながら、私自身は、元々アジアで挑戦する企業を支援したいという思いがありました。そこで、2017年にGVA Law Office (Thailand)を設立、バンコクに赴任し、主としてタイの日系企業を支援する業務を開始し、現在に至っています。

1M&Aアドバイザリーを始めたきっかけ

　私の弁護士としてのキャリアは、スタートアップ企業の支援に特化した専門家としてスタートしました。多くの起業家達と共に、事業をどう成長させるかについて考える中で、「法務が事業全体の一部としてどう機能するべきか」を意識的に考えるようになっていきました。スタートアップ企業にとって、M&Aによるバイアウトは、事業成長のための１つの重要な選択肢です。彼らを支援していく中で複数のM&A案件に関与し、その後、執行役員としてスタートアップ企業の売却に関わる機会を持てたことも、私にとって大きな経験となりました。

　こういう経験から、私自身は、M&Aという取引単体に弁護士として関与するよりも、M&Aに至るまでの法務体制の作り方、実行後の事業プロセスの変化を法律の観点から支援するような形で、１つのM&Aに対して継続的に関与するということが多かったように思います。タイにおいても、基本的な企業支援のスタンスは変わっておらず、タイの日本人起業家によるスタートアップ企業のバイアウトもサポートさせて頂きました。

2今現在のM&Aアドバイザリーの概要

　現在は、GVA Thailandの代表として、タイにおける企業活動を法務面から支援しています。事務所として取り扱う領域は広く、進出時のスキーム構築や法人設立から、契約締結交渉、労務体制構築支援、訴訟業務も積極的に扱っています。クライアントのほとんどは日系企業ですが、一部タイ企業の日本進出のサポートもしています。企業のタイ進出形態として、M&Aが採用されることもありますので、その場合は、対象会社のデューデリジェンスを実施して、法務リスク判定を行います。

　このような業務に並んで、M&Aの売手側の立場で、事業売却に至るまでの法務体制構築を、顧問アドバイザーとして支援もしています。タイにおけるM&Aにおいて、売手側の企業に十分な体制が整っていなかったために、事業売却の機会を失ってしまうことは、実は少なくありません。私自身そういう場面を見てきましたが、日本とは文化も法令も異なる中、タイにおける法務体制を、専門家の力を借りずに構築することは、現実的にかなり難しいとも思います。そのため、継続的なアドバイザーとして、是非我々を頼って頂きたいと思っています。

3独自の強みと今現在の仕事との関係性

　2017年にGVA Thailand設立して以来、これまで200社近くの在タイ企業の法務支援に関わってきました。タイに日本人の弁護士は数多くいますが、私は、これまでの多くの起業家を支援してきた経験を活かし、共に事業をどう成長させるかについて考えて、伴走型でサポートする弁護士としての強みを持っています。

　また、GVA Thailandは、私だけでなく、企業法務や紛争解決において経験豊富な２名の日本人弁護士が常駐しています。GVAグループ全体を通じた思想として、個々の弁護士として業務に当たるのではなく、チームで業務に当たることを是としており、組織としてタイ法務の経験値を確実に積み上げ続けていることも我々の強みです。