韓国語スキルと丁寧なPMIを強みとしたM&Aを展開 M&Aで日韓ビジネスに貢献したい
生年月日 | : | 1971年12月4日 |
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所属企業 | : | 株式会社スターシア |
役職 | : | 代表 |
最終学歴 | : | 慶應義塾大学経済学部 |
出身地 | : | 千葉県 |
現住所 | : | 東京都 |
現在はあまり行なっていませんが、以前は日韓クロスボーダーM&Aのマッチングを行っていました。日本のとあるベンチャー企業で数多くのベンチャーキャピタルから資金調達をしている会社の買収案件です。その会社は資金繰りに行き詰まり、社会保険料も滞納している状況で、経営者はベンチャーキャピタルからの突き上げを激しく受けている状態でした。まさに倒産寸前です。経営者は藁にもすがる思いで「韓国企業で投資してくれる会社はないだろうか」と弊社に相談を持ちかけてきました。通常は「無理」と答えるところでしたが、業種的に特殊でニーズがありそうな気がしたため、韓国国内でM&Aを頻繁に行っている友人に相談しました。案の定、「おもしろい」ということになり、価格さえ合えば可能性があることがわかりました。そこで、この会社に投資しているベンチャーキャピタルほぼすべてに株の売却に関する折衝を行い、既存株式買収と増資を組み合わせたディールを短期間にまとめました。
ディールクローズ後、ほどなく神風が吹き、その会社はすぐに株式公開をはたしました。投資した韓国企業は大儲けです。報酬的にはそれほど大したものではありませんでしたが、仮にあの経営者が弊社にたどり着いていなかったとしたら、間違いなく破産していたはずです。そういった点からも、社会に貢献できたという達成感を得ることができました。
以前は、日韓のクロスボーダーM&Aに大きな可能性を見出していました。特に李明博大統領の時代は、日本企業のM&Aについて、国の資金で日本企業投資専門のファンドを立ち上げたり、経済産業省のような役所の外郭機関で、「日本M&Aデスク」というのを創設したりと、国をあげて大盛り上がりでした。当時、韓国政府が考えていた仮説は以下の通りです。韓国はサムスンや現代自動車のようなグローバル企業が多くあるものの、富は財閥に偏り、中小企業が十分に発達していない。それが韓国経済の弱みになっている。一方で、日本経済の強みは技術力の高い中小企業が豊富であることだ。ところが、日本経済をさせてきた中小企業群は、事業承継の問題に直面しており、優良企業でありながらも廃業せざるを得ない事例がたくさんある。そこで、高い技術力を有した日本の部品産業・素材産業の中堅中小企業を買収し、韓国経済の弱さを克服していこう、というものです。
弊社も日本国内でのネットワークを生かし、日本企業の売り案件情報を発掘したり、韓国企業数十社から情報提供料としてリテイナーフィーをもらったりしていました。政府主催の「日本M&Aフォーラム」のような会合にも出席し、他の韓国系のM&Aブティックが有効な手を打てないなか、情報量の多さや日本社会への食い込み方などで他を圧倒している自負もありました。ところが、このシナリオに乗ったM&Aの成功事例はまったくありませんでした。政府が支援した枠組みやファンドも成果はゼロだったように記憶しています。日本の北から南まで、いろんな会社に韓国企業をアテンドしましたが、実際にディールに入ることはほとんどありませんでしたし、ディールに入ってもすぐにブレークしてしまいました。
では、なぜそのような事態に陥ってしまったのか。そのときに出した結論は、①優良な売却・投資案件は、それ専門に行なっているPEファンドやM&Aブティックのインナーサークルで消化されるため、そこに食い込まないかぎりは優良案件の情報は取れない②韓国企業への買収でも良いと考えるのは、日本国内で売却先を見つけられなかった会社だ③韓国企業も技術力を上げてきているため、韓国企業が保有していない技術を有している企業がそもそも少ない。④本当に儲かっている企業は、事業承継の問題に直面しない。⑤日本の中小製造業の強さは、何か特別な魔法のような技術にあるというよりも、工程の改善等地味な継続的努力によるもので、パッと見、その強さを把握できない。⑥技術が職人などの個人に帰属しており、職人が抜けると価値がなくなってしまう、といったものです。
現在でも、日韓間のM&Aは潜在的に大きな魅力を持っているという考えに変わりはありませんが、そのためには上記のような阻害要因を乗り越えていく必要があると考えています。
「社会に貢献するんだ」という誠実な想いと想像力だと思います。
過去に、成功報酬を得ることを最優先して必要な情報を十分にクライアントに開示しなかったり、ディールクローズ後に大きな問題が発生しても、もう終わったことだからと知らんぷりしたりする人を見てきました。そのような不誠実な態度を見るにつけ、「ああいう風にはなりたくない」と思ったものです。
また、PMIを大切にするという観点からも、このディールが成功した場合に買い手と売り手がそれぞれどのような状態になるか、そのときに発生しうるリスクはなんなのだろうか、と想像する力も必要かと思います。
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